「鳥は卵のなかから抜け出ようと戦う」

『デミアン』のなかに出てきたことば。

とてもよかった。
またメモを取りながら返したい。

読み始めは何だか『トーマの心臓』みたい、などと思ったけれど、トーマの心臓とはまた別の大きさでわたしを打った。
今わたしが定着させるべきことを美しい音にしてくれたような。
いささかかたくはあるけれど明瞭で深く彫り込まれている。
小学生の時に読んだ『車輪の下』は説教くさくて、堕落のことを書いているにもかかわらずなにかきれいな世界から抜け出さないところで書かれているような気がしたけれど、たぶん今きちんと読んだら別の印象を持つのだろうな。

まさに“自分のなかにあることしか世界には見いだすことができない”ということばがこの作品を語る。

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「鳥は卵のなかから抜け出ようと戦う」という言葉を読んではっとした。
ちゅんはわたしと違って卵から生まれたんだ。
もちろんそんなこと当たり前だけど、今までそのことをちゃんと意識にのぼらせたことがなかった。
本当の意味で考えたことなどなかった。
卵から生まれたちゅんがこうして仲良くしてくれることはなんて不思議なんだろう。
ちゅんの羽根を細かいこまかいところまで見つめると数学みたいだ。
完璧にデザインされたアラベスク。


ほんとうはまったくそんなことを言いたいわけじゃないこの言葉からこんなことを受け取るひとがいるなんて、ヘッセも考えなかっただろうな。