流れ星、まぼろしの空



双子座流星群を見たいなとベランダにでたらちょうど空の真ん中に冷たい雲がかかっていた。
氷のつぶのような薄い雲だけれどオリオン座を薄く隠していて、けれどかえって地上は遠くまでぐるりと澄んで見えた。

見つめているととりとめのないことを考えてしまう。
それはそのもののことが好きだからなんだと思う。

ふと、少し西よりの地上近くにずいぶん大きな青白い光が落ちた。
音がしそうなくらい大きいのに何もきこえないのが不思議。
誰かも一緒に見ただろうか、と思う。

北側の窓を開けて窓べりに座り、柵の間から足を出して流れ星を見ていた子供は本当にわたしだっただろうか。
遠くの空に流れ星はいくつも落ちてきていた。
私はその子供と窓、子供が見ている遠い空をなにかフレームに収まった絵のように同時に記憶している。
少し紫がかったグレーの空。
そばにいたのは弟だろうか、友人だろうか。
あのシーンが夢なのかほんとうなのかわからないでいる。

ときどき夢の中の空にはプラネタリウムのような天体図がかかっている。
からだを螺旋に巻いた恐竜のような魚、オリオンのふくらはぎの厚み、オリーブのかんむりのついた髪の毛、中国の麒麟のような雄牛。
古いタペストリーのような絵であったり、ただ星同士が線でつながっているだけのこともある。
どこか近所の銀河系が渦まいて動いているのが見える。
光が吸い込まれる溝や、髪をそよがすようにコロナを燃やす大きな星。
飲み込みそうな彗星がやってくることもある。

今日は南の空の朝焼けがまだ残っている。
ずっと遠くまで晴れているんだろう。