* ひさしぶりの舞台



今日は私が一番初めて教えをしたときにずっとついてきてくれていた生徒さんの8年ぶり(?)の舞台を見に行ってきた。
舞台こそ久しぶりだけれどそのあいだ仕事をしたり、別の先生のところでレッスンをはじめてみたり…という彼女なりの時間が当然積まれていたはず。
けれども私にとってはその、最後の舞台で時が止まっている。
見ている間だらんと全身の力が抜けるくらいに虚脱し、同時に胸がどきどきした。
メールで「いっぱいダメ出しするからね」と言っていたのに、なんだか涙が出ちゃってそんなこと忘れていた。

8年前、まだぺーぺーだった私は誰のレベルにも合わせようとせず自分が良いと思うことばっかりをレッスンでもやったし舞台にものせた。
生徒さんにとってはとんだスパルタ先生だったと思う。
まだ踊り始めて半年くらいしか経っていない生徒さんもいたのにカウントもなくセリフの曲で振りをつくったり、ピルエット2回転して3回転目はアチチュードから床に転がる、みたいな高度なことを「大丈夫、できるよ」とにこにこ言ったりして「鬼」と同僚から言われたりした。
でも私には「できるかも」と思わせる力があったらしく(もしかしてこれだけは唯一の才能かもしれない)、不思議とみんな催眠術にかけられたみたいにやっていたけれど。
衣装も、裁縫ができないくせに凝りたいからパターンからひいたりして結局生徒さんに迷惑かけたりもした。

色んな生徒さんがいた。
からだが固かったり、6拍子を取れなかったり、腹筋ができなかったり。
それぞれが自分のコンプレックスを意識しながらレッスンをしていた。
でも私にはどのからだもそれぞれ可能性があるように見えていたし、おもしろくないものなんかひとつもなかった。
踊り方なんかひとつじゃないから、正解も不正解もないんだよー、とにこにこしながら、でもひとっつも妥協したくなくて、変なたとえを連発して、あつくるしい先生だったと思う。
私のレッスンは次第にそのスタジオで一番高度なのではないかとささやかれ、生徒さんはどんどんコアになっていった。

そんな私に懲りず、ずっとついてきてくれた。
私がスタジオを辞めることになったと同時に、私の生徒さんはほとんどそのスタジオをやめてしまった。私のいたスタジオはどういうわけか生徒さんが違う先生のレッスンを掛け持つことを好まなかったから、行きづらくなってしまったというのも理由のひとつかもしれない。
辞めたとき、いつかどこかでまた教えをしてねと言ってくれていたのに私はなかなかそれができず、また一緒に舞台を踏もうね、ということばを実行できずにいた。

ずっと踊りから離れていた彼女がレッスンを再開したと話してくれたときはすごく嬉しかった。
そして今回のこの舞台。
ほんとうは私が果たしたかったことなのだけれど、でもやっぱりそうはできなくて、けれど別の場所であってもこうして踊っているすがたを見ることができた。
あのころよりもずいぶん上達したけど私の知っている踊り方の癖は変わっていなくて、きっとすごく頑張ったんだろうなーと嬉しくて。
どんなにかあの頃彼女たちを毎日見ていたかということを思い出した。
スタジオが水没しちゃえばいいのにと思うくらいに辛い毎日だったけれども生徒さんだけは可愛くて絶対に守る!と思いながらいつも私が守られて育てられていた。

あれからずいぶん時間が経ったんだなあ、
とかなんとか色んなことを考えて、ちょっとなかなか眠れなそう。