* アリスの罠



もしかしたら気付いているよりもずっとはるかに、わたしはわたしを縛っているのかもしれない。
認識したつもり、をさらに越えて。
鼓舞するためのプレッシャーや守りたく思うものが、わたしを後手に回らせる。

端とはしの血がぶつかり合っているわたしにとっては、大きな幹に流れる水のようにきちんと一方向に寄り添うひとがまぶしい。
たとえそのあゆみがゆっくりでも、重要な水脈じゃないと本人は思うようなことでも。

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世界は遠ざかり細いトンネルの向こうに吸い込まれる。
手を伸ばしても決して届かないだろう。
わたしはひどく高いところにいながら、足は床を感じている。
見えているそれは、他の誰かの足みたい。
目も口も大きく輪郭を越えているのにその瞬間に小さくちいさく収まってもいる。

ときどきそんな風に見える世界とわたしのこころのありようは、ひどく似ている。